ホルデニンが毛乳頭細胞を活性化

ホルデニンという物質が毛乳頭細胞を活性化し発毛を促進する可能性を有しているとの研究記事が、学術オープンアクセス出版の先駆者であるMDPIのWebページにて掲載されていました。

参考:MDPI
https://www.mdpi.com/2072-6643/15/3/694

 

ホルデニンとは?

まずホルデニンとは、オオムギの発芽中に生成した単一化合物であるタンパク質のことです。オオムギから最初に単離された生体アミンで、 血圧を上げる効果があると言います。
そんなホルデニンが、毛乳頭細胞を活性化し、Wntシグナル伝達経路を活性化することにより発毛を促進する可能性があることが、先の記事にて中国華東師範大学生物医科学研究所の研究チームが発表されています。

〇Tips:Wntシグナルとは〇
Wntは分泌性糖タンパク質で、Wntシグナル伝達経路を活性化することによって増殖、分化、細胞運動、極性など、
多岐にわたる細胞の応答を制御するもの。主に抗がん剤研究の分野で注目されている。

参考:公益社団法人 日本生化学会
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2020.920498/data/index.html

〇Tips:オオムギについて〇
オオムギ(大麦)は食物繊維を多く含み、他の穀物とは異なり食物繊維は不溶性と水溶性の双方をバランスよく含んでいるのが特徴です。
グルテンを含まないため膨らみにくいので、パン類や麺類の一般的に素材には小麦が使用されています。
オオムギは主に麦ご飯や醤油、味噌、ビールなどの製造に用いられています。

参考:大麦について 日本精麦
https://www.nichibaku.co.jp/%E5%A4%A7%E9%BA%A6%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/

中国の研究チームが発見

ホルデニンは、色素沈着過剰の治療、糖尿病との闘い、線維症や急性炎症の抵抗に効果的なのだそうです。
しかし、ホルデニンが発毛に果たす役割はまだ解明されていない状態です。
今回、中国華東師範大学生物医科学研究所の研究チームはホルデニン治療がマウスの毛乳頭細胞(DPC)の増殖を有意に促進し、用量依存的にDPCの活性を増加させることを発見しました。
さらにホルデニンは、体外培養マウス毛包モデルにおける毛幹の伸長を顕著に促進し、脱毛誘発性毛髪再生のマウスモデルでは、毛の再成長を促進させました。

つまり、マウス実験において、ホルデニン治療を行なうことで毛乳頭細胞の増殖が促進され、毛髪の再生が可能が見出されたわけです。

その作用機序らしきものは詳細に記されているのですが、かなり複雑で、素人には理解できませんでした。
内容は、遺伝子発現 (Lef1、Axin2、サイクリン D1、ALP など) が大幅に上方制御されることが示されたこと、ホルデニン処理によって誘導された培養マウス毛包のDPC増殖の増加と毛幹の伸長は、Wnt/β-カテニンシグナル伝達阻害剤 FH535 によって回復されたことなど、それらの研究データにより、ホルデニンがWnt/β-カテニン シグナル伝達経路の活性化を通じてDPCの活性を効果的に高め、発毛を促進できることが示されているということです。

ホルデニンは自然由来の物質

オオムギから抽出されるたんぱく質のホルデニン。
抗がん剤の研究から発毛促進の可能性まで、様々な可能性を秘めた物質です。
現在でも米国ではホルデニンの成分を含む栄養補助食品が発売されているようなのですが、なかには米国FDA(アメリカ食品医薬品局)が未承認や安全でないホルデニンを含んでいるため回収を命じている製品もあったりします。
すべてがホルデニンの影響ではないのでしょうが、当該製品との因果関係が疑われる下痢や倦怠感、めまい・ふらつき、頭痛などの健康被害が報告されているのだそうです。
そしてホルデニンがオオムギに含まれているからと言って、麦ご飯を食べてビールを飲んでいれば髪が生えてくるというわけではありません。
まだまだ専門家による研究段階の話ですので、即座に新種の発毛薬がデビューするというものではありません。

そもそもAGAに効果があるのか?

ホルデニンの研究チームは、脱毛誘発性毛髪再生のマウスモデルにおける毛の再成長を促進したと発表しています。
脱毛誘発性毛髪ということは、毛髪が抜け落ちてしまう状態にあるということでしょう。
抗がん剤などの化学療法により脱毛してしまうことを化学療法誘発性脱毛症(Chemotherapy-Induced Alopecia)といいます。
もちろんAGA(男性型脱毛症)由来の抜け毛も同じだと思われます。
しかし、AGAの場合はジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンがヘアサイクルを阻害することで薄毛や抜け毛を招く症状です。
このDHTは、テストステロンが5αリダクターゼと結びついて変化したものです。
つまり、DHTによるヘアサイクルの阻害という根本原因を取り除かない限り、脱毛症状の進行は止まることが無いのです。
ホルデニンによる薄毛治療はその可能性が示されたばかりなので判断するのは時期尚早ではありますが、AGA由来の脱毛症状はノンストップで頭部を侵食していきます。
研究の実用化を待っているあいだに、ツルッツルになってしまう可能性も否めません。

自毛植毛や発毛薬は抗AGAの切り札

人にもよるのですが、本当にAGAの進行は早く、そして情け容赦がないものです。
頭頂部や生え際が寂しくなってきたなと感じつつも見て見ぬふりをしていると、いつの間にか頭部の中央付近がスカスカになってしまうこともあり得ます。
そして一般的に市販されている髪に良いとされるサプリメントやトリートメント剤などは、対AGAという観点からすると役に立ちません。
やはり、医学的に認可を受けている医薬品である発毛剤や、専門のドクターの手による外科的施術である自毛植毛に活路を見出すほかありません。

私はAGA由来による薄毛を、梅田の親和クリニック大阪院での自毛植毛により克服しました。
施術を受けたのは薄毛が気になりだしてからおよそ20年経ってからです。
20年の間には様々な薄毛イジリをされたり、疎外感を覚えたりもしました。
若いうちは頭髪を諦めきれませんし、当時は効果的な対処法が。
しかし現在では、有効なAGA対策として、自毛植毛やフィナステリドやデュタステリドといった方法があります。

現在、AGA由来と思しき薄毛症状に悩まれているのであれば、速やかに専門医のカウンセリングを受診してみてください。
きっとそこで、有効な解決法を探すことができるはずです。