老化プロセスを逆転させることに成功

全世界を巻き込む新型コロナウィルス感染症の猛威はとどまることを知らず、さらには様々なタイプの変異株も発見され、未だ我慢の時を過ごしています。
ワクチンの接種が始まったとはいえ、全国民に行きわたるのは夏を過ぎて秋になるとかならないとか。

いつになったらコロナウィルスに怯えることのない日常を取り戻せるのでしょうか。

そんな最中ですが、米国のニュースサイトにて、テルアビブ大学(イスラエル)とシャミール医療センターの高圧医学研究のためのサゴルセンターの研究チームが、生物の寿命を決めるテロメアの長さを20%伸ばす事に成功したと報じました。

https://www.prnewswire.com/il/news-releases/first-time-human-study-shows-reversal-in-biology-of-aging–telomere-shortening-and-senescent-cells-accumulation–with-hyperbaric-oxygen-therapy-hbot-301176053.html

老化プロセスを逆転させることに成功

テロメアとは、真核生物の染色体の末端部にある構造のこと。染色体末端を保護する役目をもつものです。
真核生物とは、動物、植物、菌類、原生生物など、身体を構成する細胞のなかに細胞核と呼ばれる細胞小器官を有する生物であるとのこと。

もちろん人間も複雑な細胞構造を持つ真核生物です。

生物は細胞分裂を繰り返すことで生命活動の機能を果たしています。
人間は、およそ60兆個の細胞で構成されているそうです。
この細胞分裂には回数に制限があり、それが限界に達すると分裂を停止してしまうと考えられています。

1961年米ウイスター研究所のL・ヘイフリック博士は、若い人の体から細胞を採取してシャーレでの培養を試みました。結果、細胞は50?60回分裂するともうそれ以上分裂しなくなったそうです。
さらに40歳とか80歳の人から細胞を培養すると、細胞の分裂回数が年齢の分だけ少なくなるということを発見。

このような培養細胞の分裂回数における制限をヘイフリック限界と呼びます。

染色体末端にあるテロメア

細胞分裂の回数に上限があり無限に分裂できない理由のひとつとして、染色体のテロメアの短縮という現象があげられます。

染色体DNAの末端部分のテロメアは、TTAGGGという塩基配列の繰り返し配列で構成されています。そこで染色体の構造を安定化するなどの役割を担っています。
細胞分裂においてDNAが複製されるたびに、テロメアの繰り返し配列部分が両端から減少し短くなっていきます。

細胞分裂が繰り返され、テロメアが限度を超えて短くなると、染色体の構造が不安定になったり、テロメアよりも内側にある大切なDNA配列が削れてしまったりしてしまいます。
そして、細胞はそれ以上分裂できなくなってしまいます。分裂できなくなった細胞を老化細胞といいます。

テルアビブ大学の研究チームは実験の結果、高圧酸素療法を活用することでテロメアの長さを大幅に増加させることに成功したのだそうです。
そして、テロメアの増加とともに老化細胞は減少したといいます。

可逆性疾患としての老化を対象とした包括的な研究プログラムの一部であるこの研究は、高圧酸素療法はテロメアの長さを増加させ、孤立した血球の免疫老化を減少させると題されています。

細胞の老化を抑制すると

人間の身体は細胞で構成されており、その細胞の老化は、当然、身体の老化ということになります。
その老化を抑制することは、アンチエイジングにつながり、このコラムのテーマ、健康な頭髪を維持するためにも効果的なことであると推測されます。

頭髪も毛包幹細胞や毛母細胞の増殖・分化により産生されます。
毛母細胞が加齢による老化から解き放たれ、健康に細胞分裂を維持するようになれば、歳を重ねることで起こり得る脱毛現象も解決されることが期待されます。

毛包幹細胞や毛母細胞というピンポイントではまだ難しいのでしょうが、この研究はアンチエイジングの視点からも、健康的な頭髪の維持という観点からも、注目すべきものであると言えます。

まとめ

AGA(男性型脱毛症)は老化細胞の影響ではなくホルモンの影響によるものですので、この研究テーマとは異なっています。それでも、毛包幹細胞や毛母細胞が若返るのは健康な頭髪を維持するうえで良いことだと考えられます。

梅田の親和クリニック大阪院にて自毛植毛を受ける以前の、かつての私のような頭髪を失った部位が多い状態だとテロメアの増加による毛包幹細胞や毛母細胞の健康化は悩みの解決には適していません。しかし、自毛植毛で頭髪を取り戻した今だから、今回の研究が健康な頭髪の維持に役立つであろうと期待してしまいます。

あの始皇帝も最後は、不老不死を夢見て、3000人の若者と徐福使者として遥か東方に不老不死の秘薬を求めて使いをだしたと言います。

このテルアビブ大学の研究が実用化されれば、2000年を超える時を経て、始皇帝の夢も叶うのかもしれません。