毛髪を体外で作ることに成功

横浜国立大学の福田淳二教授らのグループが、マウス実験を行い体外で人工的に髪の毛を作り出すことに成功したと発表しました。

参考:NHK
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20221022/1000086075.html

横浜国立大学:生体外で高効率に長毛を生み出す 毛包オルガノイドの作製技術を開発 (PDF文書)
https://www.ynu.ac.jp/hus/koho/28803/34_28803_1_1_221024094852.pdf

細胞を培養する際の制御技術

実験では、マウスの胎児の皮膚から表面の部分になる細胞と、体の組織を支える部分になる細胞を取り出し、これらの細胞をつなぐ役割を担うたんぱく質などを低い濃度で混ぜて培養。
すると2日後には、表面になる細胞を、支える部分になる細胞が囲むようになり、培養を始めてから10日後には毛包(髪を作り出す器官)を含んだ毛が生えてきたと言います。

元となる研究グループが発表している資料を見てみると、横浜国立大学の研究グループは、

※※ここから引用※※
マウスの上皮系細胞と間葉系細胞が培養初期に形成する凝集体の空間配置パターンを制御することで高効率に成熟した毛包を再生することに成功
※※ここまで引用※※

したと発表しています。

自分の毛包を採取してそれを培養する技術は、iPS細胞を活用して開発が進められてきました。ですが今回の研究では、細胞を培養する際に配置を制御することで毛包を再生することに成功しているのです。

さらに、5ミリほどに伸びた毛をマウスの皮膚に移植すると定着。その後、いったん抜けたものの、3週間ほどたつと新たな毛に生え替わったということです。
これは、自毛植毛でも術後に起こり得る一時的な脱毛現象と似ています。
自毛植毛手術では、移植した株に生えていた頭髪が移植後に抜け落ち、しばらく後に健康的なライフサイクルで頭髪が成長します。

100%の精度で人工培養できたのは初

記事によると、毛包を含む一定の長さがある毛をほぼ100%の精度で人工的に作ることに成功したのは初めてだと言います。
これにより、脱毛症の治療法の開発につながるのではないかと期待されています。

福田教授は

※※ここから引用※※
植毛のように移植できるので、人の細胞で作ることができたら画期的な治療法になる。
髪の毛ができる様子も再現でき、白髪が生えるメカニズムの解明にも応用できる。
※※ここまで引用※※

と話しています。

抗AGAの光明となるか

既存の毛包培養の研究と同様に、髪の毛のもととなる細胞を体外で培養するということは、移植における数的な制限が解除されるということです。
現状、AGA対策として行われる自毛植毛において、最大の問題となるのが採取できるドナーに限界があるということです。
事実として私の場合、親和クリニック大阪院の医師によれば、自毛植毛に踏み切るのが遅かったせいで、納得のいく仕上がりのために採取できるドナーの数がギリギリであったと言われました。それは、AGAの影響を受けない後頭部の頭髪でさえ、加齢により徐々に薄くなってしまうのは避けられないからです。

この点が、このコラムでAGAに対処するなら若いうちが良いと言っている理由です。

この発表は、良いことづくめの情報ではあるのですが、気になるのは実用化がいつ頃になるのかということですよ。
いまだマウスでの実験段階ということは、大雑把に言うと後に実験の精度を高め別の個体での実験、そして人体での臨床実験などを経て治療法として認可を受けるわけですから、かなりの時間を要します。

AGAは発症してしまうとノンストップで進行します。気づいたら焼け野原となってしまうこともあり得ます。
そのため、現在進行形でAGAによる薄毛化・ハゲ化に悩まれている方は、新たな技術を待つだけではなく、既存の対処法を視野に入れて対抗手段を模索してもらいたいと思います。

心的ストレスを抱え込まず楽しい時間を過ごすためにも、薄毛の対処はお早めにした方が良い結果が期待できます。