円形脱毛症の治療に新たな一歩

JAKという酵素の働きを抑制することで、炎症や関節破壊を抑える薬をJAK阻害剤と言います。
このJAK阻害剤の一部に、円形脱毛症の治療において効果が認められたものがあるとの報告がアメリカのイーライリー社でなされました。早速レポートしたいと思います。

もとは関節リウマチの改善薬

円形脱毛症は、頭皮や顔、身体の他部位に脱毛を来す自己免疫性皮膚疾患です。
患者によりその症状は様々で、全年齢層の人に性別を問わず発症する可能性があります。
原因は、身体の免疫系が誤って人の毛包を攻撃し、頭皮および体の斑点状または完全な脱毛、ならびにその他、身体的および心理的症状を引き起こします。
円形脱毛症は、状態によって治療法がことなり、場合によってはステロイド剤を使用することもあり、適切な治療が難しいです。この円形脱毛症にJAK阻害剤が有効だというのです。

JAK阻害剤とは、JAKという酵素を阻害し免疫反応に関わるサイトカインの働きで関節リウマチなどの症状を改善する薬です。現在では関節リウマチ患者に向けて使用されている薬なのですが、一部が、円形脱毛症にも効果が認められたというのです。

具体的には、FDA(米国食品医薬品局)より、免疫系が毛包を攻撃して斑状になる自己免疫疾患である、中等度から重度の円形脱毛症の新規治療薬である経口ヤヌスキナーゼ(JAK)、開発コード : CTP-543のファストトラックの指定が承認されたというものです。
※ファストトラックとは、優先審査制度の別称で、必要性の高い新薬の審査を優先的に行う制度のことです。

何故、これが注目されるかと言えば、現時点でFDAが円形脱毛症治療薬として認可した医薬品は存在しないからです。
今回のファストトラックの指定は、脱毛症が有効な治療を必要とする重大な疾患であることを示していると同時に、医薬品承認の可能性を開いたとも言えます。
そしてCTP-543は、中等度から重度の疾患のための潜在的な第一級治療薬として重要な医学的進歩を示すだろうと目され、現在も急ピッチで研究が進められ、2020年第4四半期にCTP-543のフェーズ3テストを開始する予定と報道されています。
テストされている薬の形状は経口薬で、もし市販されれば自宅にて服用できるようです。

まとめ

今回の新薬報道は、円形脱毛症に悩む患者さんたちにとって希望であると言えます。
簡単に言えば、今まで無かった円形脱毛症専門の治療薬ができることになるということで、画期的です。一日も早く、FDAで医薬品として認められる日が来るのを願ってやみません。

そして、日本でも治療薬として承認されることを望みます。新型コロナウィルスの関連で、治療薬承認が日本では、何年もかかることが報道されていました。慎重なのは、良いことですが、スピードも重要です。自毛植毛手術も状態が悪くなる前に行った方が、費用も安く、良い結果につながると言います。最近よくニュースで耳にする「スピード感」ではなく、「スピード」が重要です。

参考)
皮膚科学会:https://www.dermatol.or.jp/qa/qa11/index.html
コロンビア大学:https://www.cuimc.columbia.edu/news/drug-restores-hair-growth-patients-alopecia-areata
日本イーライリー株式会社http://www.qlifepro.com/news/20200324/alopecia-areata.html
ヒポクラ×マイナビ:https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/31865802