抗がん剤による脱毛を冷やして抑える機器を承認

少し前の話なのですが、抗がん剤治療に伴う脱毛を抑えるのを目的にした装置が、国内で初めて医療機器として承認されたそうです。
頭皮を冷却することで、毛髪をつくる細胞が抗がん剤の影響を受けにくくなる効果が期待されているのだとか。

事例が特殊なため、自毛植毛手術のように一般的な薄毛の悩みを改善するようなものではありませんが、髪の悩みを解決するものとして、今回取り上げさせていただきます。

承認された経緯

承認された機器は「パックスマン・スカルプ・クーリング・システム」という名称で、伊藤忠グループのセンチュリーメディカル社という世界的な医療機器メーカーが製造販売しているものです。
ガン患者の頭皮を冷却する装置であり、固形がんに対する薬物療法を受ける患者の脱毛を、抑制することを目的に使用されています。

病院などで抗がん剤治療を受けるごとに、術前から術後にかけて頭部につけた専用キャップに抗がん剤を投与する30分前から投与の終了後90分以上まで頭部につけた専用キャップに、マイナス4℃ほどの冷却液を流し、頭皮を冷やします。
これにより頭皮の毛細血管を縮め、毛包にまで届いてしまう抗がん剤の量を減らす役割が認められたのだとか。

元は、パクリタキセルの副作用のひとつとされる末梢神経へのしびれの対策として、手足を冷やすことで血流の流れを遅くさせ、抗がん剤が神経にまわりにくいようになるのではないかと開発されていたもののようです。それが、頭部を冷却することで抗がん剤の副作用である脱毛やしびれが軽減されることが判明し、医療機器として承認されたようです。

実際に効果が認められた医療機器

乳がん患者を対象にした国内の治験において、このシステムを使った30名中8名が、50%未満の脱毛でウィッグは不要と2人の医師から判定されたそうです。
そして、乳がんを含む固形がん患者に使うことが承認されたのだとか。
現在国内では、乳がん患者の3割程度にがん薬物療法が施行されています。
乳がん治療にはアントラサイクリン系抗がん剤またはタキサン系抗がん剤が頻用されています。しかし、副作用としては脱毛作用の発現率が高く、一説では抗がん剤では62~94%も脱毛を引き起こすそうです。
乳がん。女性にとって非常につらい病気です。また、デリケートな問題も含みます。
その治療において、薬の副作用として脱毛してしまうことは、病気と闘っている方にとって大いなる精神的負担をもたらします。罹患してしまった方の約半数が、最も苦痛な副作用として脱毛を挙げているというデータもあります。
また、罹患者のなかでも8%ほどの方は、副作用による脱毛を回避することを優先して、治療効果が劣る他の抗がん剤を選択するという報告もあるそうです。
これは深刻な問題と言っても過言ではないでしょう。

「パックスマン・スカルプ・クーリング・システム」はすでに頭痛を抑える目的で承認されていたほか、一部の施設では脱毛抑制の臨床研究などで導入されているそうです。
センチュリーメディカル社ではこの機器を使うことに公的保険が適用されるよう求めているが、現時点では未決のままだそうです。

髪の悩みは深いもの

私はAGA(男性型脱毛症)により、薄毛・ハゲに悩んできました。
そんな私は、親和クリニック大阪院での自毛植毛という手段で頭髪を取り戻しました。AGAは症状であり病気ではないため、同列に語るのも憚られます。しかし、母のがん治療を間近で見て、外見の変化に対するストレスは少しであっても取り除いてあげたいというのが本心です。

闘病。その名のとおり、がんという強大な敵と闘っている人たちです。
生を左右する病に抗っている人たちの心的な負担が、少しでも解消できるように。この機器が広く使われるようになってくれることを願います。