幹細胞分裂タイプの違いが毛包の再生・老化を決定づける

東京医科歯科大学・難治疾患研究所・幹細胞医学分野の松村寛行助教と、西村栄美教授(東京大学・医科学研究所教授兼任)の研究グループが、横浜市立大学分子細胞生物学分野、フランス国立科学研究センターなどとの共同研究において、加齢に伴う脱毛の原因が幹細胞分裂にあることをつきとめたと報告しました。

参考:国立研究開発法人日本医療研究開発機構
https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20210317-02.html

毛包において、器官の運命を決定する幹細胞分裂タイプが存在

研究グループは、毛を生やす小器官である毛包の再生と老化が、幹細胞分裂タイプによって決定づけられていることを発見。

幹細胞とは、自己複製能と分化能を持つ特殊化していない細胞と定義されています。
自己複製とは、幹細胞が複数の細胞分裂の周期を経ても未分化状態を維持する能力と定義されています。これに対し分化能は、幹細胞が体内に存在するニューロン、肝細胞、あるいは筋細胞などの特殊化した細胞タイプに分化する能力とのことです。

肝細胞は、多くの組織や臓器で加齢に伴い枯渇することで、機能が低下していくことが分かっています。
毛包もそのひとつで、加齢に伴うDNA損傷や環境ストレスに応じて毛包幹細胞は自己複製したり毛を生やす細胞を産生したりする代わりに、表皮角化細胞を生み出すようになるのだと言います。
この表皮角化細胞がフケや垢として排除されることにより、段階的に毛包のミニチュア化が進み薄毛や脱毛が引き起こされるというメカニズムというわけです。

幹細胞の自己複製の実態はいまだ明らかではなく、再生や老化との関連については判明していませんでした。
そこで研究チームは、マウスの毛包幹細胞の系譜解析と分裂軸の解析を実行。
若いマウスでは毛包幹細胞が典型的な対称分裂と幹細胞ニッチを倍加するための非対称分裂をしている一方、加齢したマウスは特殊な非対称分裂が起きていることを発見したといいます。
この特殊な幹細胞分裂は、基底膜に対し垂直に分裂する際に表皮角化細胞へと分化した細胞を生み出すもので、加齢のほかゲノムストレスなどの存在下で同様に観察されたと報告しています。

再生と老化を制御する幹細胞分裂プログラムの一端を解明

そして、毛包幹細胞が発現するXVII型コラーゲンは、細胞極性蛋白として知られるaPKCλの発現を維持することによって再生型の幹細胞分裂を促進することが明らかになりました。

加齢により毛包幹細胞におけるXVII型コラーゲンが減少に加え、上皮の極性形成に関わる分子としても知られるaPKCλの発現が減少することで引き起こされ、再生型からストレス応答性の非対称分裂へと変化し、幹細胞の枯渇による毛包の矮小化と脱毛を引き起こすことを明らかにしたわけです。

組織の再生と老化を制御する幹細胞分裂プログラムの一端を解明した今回の成果は、脱毛症の治療法や上皮組織の抗老化戦略の開発に繋がることが期待されます。

つまり、幹細胞の分裂タイプをコントロールできれば、毛包のミニチュア化を抑制し薄毛や抜け毛の進行を食い止めることができるようになるかもしれないのです。

以前、『生活習慣による薄毛や脱毛のメカニズム』という記事で西村栄美教授の研究を調べて以来、教授の研究に関する記事を探していて見つけました。
新型コロナウィルス感染症の猛威に、当惑しきりである緊急事態宣言等の施策、それに伴う経済活動の混乱により一部の薄毛対策研究がストップしてしまうなど、暗い話題ばかりが先行してしまいます。重大な問題(コロナ禍)のまえではミニマムな話題(薄毛対策等)はかき消されてしまいがちです。それは仕方のないことかもしれません。
しかし、私は自らのコロナ対策をしっかり行なったうえで、コロナの行方を注視しつつもAGA(男性型脱毛症)や薄毛抜け毛対策の話題にも注視したいと思います。
我々薄毛に悩む者の星でもある西村教授の動向に期待していきたいです。

AGA対策の切り札でもある親和クリニック大阪院で自毛植毛を受け、取り戻した頭髪を再び失いたくないわが身として、これからも抜け毛や薄毛を抑制できる技術を注視していきます。