傷あとからは髪が生えてこない問題

瘢痕(はんこん)性脱毛症という症状をご存知でしょうか。
瘢痕性脱毛症とは、皮膚に瘢痕が生じることを原因として発症してしまう脱毛症状のことです。
瘢痕とは簡単に言えば、頭皮に怪我や火傷を負ったときや、外科的手術などを行なった際に残ってしまう傷あとのことです。

皮膚に瘢痕ができてしまうと、頭髪を産生する基となる毛包も同時に障害を受けることになってしまうのです。
毛包が機能不全を起こしてしまうと頭髪は再生できなくなってしまい、その部位は脱毛状態になってしまうということです。

参考:親和クリニック 瘢痕性脱毛症
https://shinwa-clinic.jp/about/drcolumn/31/

参考:日本形成外科学会 瘢痕(傷あと総論)
https://jsprs.or.jp/member/disease/scar/kizuato.html

毛包まで損傷してしまう瘢痕

頭皮下には毛包と呼ばれる組織があります。
毛包は毛根を包んでいる組織で、毛根を保護し頭髪が伸長する通路となるものです。
上皮性毛包,硝子膜,結合組織毛包の3種で構成され、毛包上部には毛包腺または皮脂腺と呼ばれる腺が開口し、脂肪性の物質を分泌して皮膚や毛の表面をなめらかにします。
毛包に存在する細胞が正常に増殖することで頭髪は再生するのです。
皮膚が瘢痕化すると、頭髪の再生に重要な毛包の細胞も障害を受け、不可逆的に生えないようになってしまいます。
このような過程で発症するのが瘢痕性脱毛症というわけです。

円形脱毛症とは異なる状態

瘢痕性脱毛症は性質上、円形脱毛症と類似した疾患としてみなされることもあります。
正確に双方を区別するためには、皮膚の一部を採取して皮膚生検を受ける必要があります。
皮膚生検の病理組織検査で得られた情報を通し、脱毛症の種類を判定します。

円形脱毛症では、根本原因が判明しそれを取り除くための処置を行なえばいずれ頭髪は再生します。
しかし瘢痕性脱毛症の場合は、原因となっているものを治療したとしても後に頭髪が再生されることはありません。

その点で考えると、AGA(男性型脱毛症)に近いものであると言えます。
AGAでも、長年にわたり症状が進行しきっていると毛包が機能不全を起こしてしまうケースが存在します。
そうするとそこから頭髪は再生されず、ハゲてしまった状態となってしまいます。

AGAの対処で残る大きな瘢痕

頭皮に大きな傷あとを残す要因として想定できるのは、事故などで頭部を損傷してしまった場合や、開頭手術などを行なった場合、そして自毛植毛のFUSS法(切る手法)が挙げられます。
FUSS法は、後頭部の頭皮を約10~20cmほど薄く帯状に切り取り、そこから移植に使う健康な毛根を採取する自毛植毛の手法です。
皮膚を切り取った部位は上下の皮膚を引っ張り、その合わせ目を縫合する処置を行ないます。
この手術時に残った横一線の大きな傷あとからは、当然ながら頭髪が再生することがありません。
つまり、瘢痕性脱毛症のでき上がります。

瘢痕性脱毛症は頭皮下の毛包が破壊されているため、フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルといったAGA治療薬を使用しても効果はありません。
瘢痕性脱毛症への対処としては、自毛植毛治療か周囲の髪の毛を伸ばして覆い隠す等の方法が想定できます。

切らない手法は大きな瘢痕が残らない

自毛植毛手術の手法には、前記したFUSS法のほかにFUE法という切らない手法が存在しています。
私が梅田の親和クリニック大阪院で受けたMIRAI法による自毛植毛がまさにそれで、
独自開発の極細パンチブレードで毛根を周囲の皮膚組織ごとひとつひとつ丁寧に移植株を採取します。
経験豊かなドクターが全体のバランスを確かめながら移植株を採取しますので、くり抜いた痕もさほど目立つようなことはないです。
なにより、頭皮を広範囲に切り取るということをしなくて良いのは安心です。

何らかの理由により頭部に大きな傷あとをお持ちの方で、そこだけハゲていることを気にしているなら、専門医に相談してみてください。
私が悩んでいたのはAGA由来による薄毛からハゲかけ状態でしたが、頭髪がなくなっている部位があるのをコンプレックスに思う気持ちは分かります。